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物語全体に仕掛けられたトリック!ネット小説大賞受賞「僕は僕の書いた小説を知らない」

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「僕は僕の書いた小説を知らない」

 

今日はこの小説を紹介しようと思います。

Amazon Kindle Unlimitedで小説を探している中で、あらすじを読んで面白そうだなと思って中身も読んでみました。

 

読んでみての簡単な感想ですが、ネット小説大賞を受賞して紙の本が出版されるとのことで、それが頷けるような作品でした。

 

※一部ネタバレを含む可能性があります。未読の方はご注意ください。

 

僕は僕の書いた小説を知らない (双葉文庫)

僕は僕の書いた小説を知らない (双葉文庫)

 

 

作品紹介

あらすじ

「失ってしまう記憶の代わりに、最高の物語を残したい」小説家の岸本アキラは、ある朝目覚めると“昨日”の記憶がないことに気付く。実は彼は二年前の事故により、記憶が毎日リセットされてしまうのだ。そしてそんな困難な状況でも、アキラは小説を書き進めていた。絶望的な不安と闘い葛藤しながら、決して“明日”を諦めまいともがく感動ストーリー。

 

Amazon.co.jpより

 

この作品の作者は「喜友名トト」という沖縄在住の作家さんです。2014年に「悪の組織の求人広告」で作家デビューしています。

 

この作品は「第6回ネット小説大賞」受賞の作品ですが、受賞を経て、2018年6月に紙の本として初版発行されました。

 

ある朝目が覚めて、一日を過ごし、眠る。しかし翌朝起きると昨日のことを覚えていない。

そんな、前向性健忘」という病気をもつ主人公が、その症状を抱えながらも小説を出版を目指して書き進めていくという物語です。

 

登場人物

岸本アキラ(主人公)

1日ごとに記憶がリセットされてしまう「前向性健忘」という症状を抱えている。職業は小説家。ペンネームは「岸本瑛」。ハードボイルド風味を目指して生きており、キザなセリフをよく使う。

 

日向

アキラの妹。アキラの生活のサポートのため、毎週木曜日にアキラのアパートにお世話をしにくる。アキラのことを「お兄」と呼んでおり、兄が小説家として成功することを応援している。

 

修(しゅう)

アキラの大学時代からの親友であり、アキラの良き理解者。気配りのできるハイスペックな爽やかイケメン。理系大学院を卒業後、大学で研究を続ける学者。

 

アキラが小説を書くために通っているカフェのウェイトレス。愛嬌のある可愛らしい接客が特徴。アキラの行きつけバーである「ボーディーズ」で偶然出会って、そこからアキラとの距離が縮まっていく。

 

記憶が毎日リセットされる症状を抱えながらも小説を書いていく

主人公である岸本アキラは、朝起きたらいくつかの違和感に気づきます。

 

「手に取ったスマホが自分のものではない、こんなに早い時間に目覚ましをセットする習慣はない、昨日は横浜にいてカプセルホテルに泊まったはずだ...」

 

そんな状態で洗面所で顔を洗おうと鏡を見ると、

「PCを立ち上げろ。デスクトップにある『俺へ』というテキストデータを開け。アキラ」

と自分の字で書かれたメッセージが書かれています。

 

PCを立ち上げると、自分が書いた記憶のないメッセージがいくつもあります。

 

しかし、それらのメッセージを読むことで、アキラは自分がバイク事故に遭い「前向性健忘」という症状となってしまったことを理解します。

 

1日ごとに記憶がリセットされてしまうため、バイク事故以前の記憶はあるが、それ以降の記憶はないという状態です。

 

そのメッセージにはアキラが生活を送るうえでの、あるルールが記載されています。

 

  1. 朝起きたらすぐに、過去の自分からのメッセージを全て読んで、今の状況を理解する

  2. 昨日までの自分が書き進めたプロット(小説の構想)と小説を読む

  3. その日に得た経験を簡潔なテキストにしてまとめておく

  4. 1~3を踏まえ、小説の続きを書き進める

 

つまり、テキストデータによる過去の自分の積み重ねをもとに小説を書き進めるということです。

実際に、書きかけの小説の文字数は6万字近くあり、記憶にないながらも、過去の自分が書き進めていたことを理解します。

 

こんな症状を持っていては、普通の職業で働くことはできず小説家として生きていくしかないと判断したアキラ。

テキストデータに書かれたルールを繰り返すことにより、小説を書き進めていくことを決心します。

 

一人の少女との出会い

小説を書き進めていく中、小説を書くのに通っているカフェのウェイトレスである翼さんと出会います。

アキラに対して愛想よく接する翼さんに対して、アキラは前回の記憶がないので「この女性可愛らしいけど、誰だっけ...?」という感覚を持ちます。


そんな中、過去の自分からのメッセージの指示で、アキラは翼さんとデートを何度か重ねるようになります。

 

1年前に好きだった人に振られてしまったという翼さんはアキラに好感を持っていて、アキラの小説執筆が上手くいっていると聞くと、とても嬉しそうにします。

 

アキラ自身も翼さんとデートやメッセージのやり取りをする中で、前回会った記憶はないけど、なんとなく顔が思い浮かぶような不思議な感覚を持つようになります。

 

小説が出版できない挫折、からの衝撃のラスト

症状を抱えながらも全力で小説を書き進めるアキラに不運が訪れます。

あることを理由に、完成した小説が出版できない、と編集者に告げられるのです。

 

過去の自分が積み上げたものが全てなくなってしまったショックが大きすぎるため、

 

ー俺はもうダメだ。

 

そんな思いから、アキラは小説を辞めようと考えてます。

 

バイクで海岸に向かい砂浜で明け暮れているアキラですが、駆け付けた翼さんからこんなセリフを言われます。

 

「今まで書いた小説を一度読み返した方がいい。」

「そうじゃないと、可哀そうだよ」

 

このセリフにより、アキラはいったん過去の自分が書いた小説を読み直します。

しかし最終的にはこの翼さんのセリフがきっかけとなり、再び小説を書き進めて出版を目指すという決心につながるのです。

 

物語全体に仕掛けられたトリック

この作品中では、1日ごとに記憶がリセットされるアキラが主人公だからこそできる伏線が張られています。

 

トリック自体は物語を読み進めて確かめてみてください。

 

感想

作品を読み終えてのぶっちゃけた感想です。

 

正直、最初のうちは「なんか単調だな」と思いながら読み進めていました。

大変な症状を抱えながら小説を書き進めている描写は伝わるのですが、話の中に抑揚がないなー。。。というような気がしていたんです。

ですが、翼さんと出会ったあたりから、もっと正確に言うと、翼さんとデートをしたときあたりから物語がグッと進み出したような気がしました。

そこからは物語を読み進めるのが止まらなくなりました。

 

物語の登場人物の描写が丁寧で、それぞれの特徴がよく出ています。

特に、翼さんはとても可愛らしい女性キャラクターで、こんな人が自分のそばにいたら元気をもらえるなあ、と思ってしまうほどでした。笑

 

また、作品紹介でも書きましたが、物語全体でトリックがかけられています。

読み進めていると、この人が物語の鍵となる人で後で伏線回収されるのかな、となんなくわかる気もします。

ですが、最後の最後で仕掛けが出てきて、「ああ、なるほどな」と思わされてしまうと思います。

最後の1行まで読まないとわからないので、ぜひ読み進めてみてください。


個人的には、この物語の設定は「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」と似ていたような気がしました。

(登場人物の記憶が1日ごとにリセット?されてしまう点で。)

 

是非、映画化してほしいなと思いました!

 

おわりに

以上、「僕は僕の書いた小説を知らない」を紹介しました!

 

興味をもった方は、ぜひ手に取ってみてください。

 

僕は僕の書いた小説を知らない (双葉文庫)

僕は僕の書いた小説を知らない (双葉文庫)